横浜市立図書館に関する公開質問状

平成20年11月7日
横浜市長 中田 宏 様
質問者 団体住所 横浜市(以下略)
団体名称 横浜の図書館の発展を願う会
代表者の氏名 溝井 正美
横浜市立図書館に関する公開質問状
市長には日頃から市政にご尽力くださり、お礼申し上げます。
私たち「横浜の図書館の発展を願う会」は、横浜市立図書館が地域の情報拠点として発展するために、図書館と協働して、図書館の価値を広く市民に伝え、図書館サービスの充実を願って活動するために設立された団体です。
 昨年末に横浜市立図書館に指定管理者制度導入の計画があると知り、集会を重ねて図書館と指定管理者制度についての情報交換をし、教育委員会や市議会常任委員会の傍聴をして参りました。また、教育委員会に提出した請願書の不採択理由も読みました。しかし、未だ、図書館に指定管理者を導入する明快な回答をお聞きできていません。
 そこで、行政の最高責任者である市長に、私たちの疑問にお答えいただきたく、下記のとおり質問状を提出することにしました。そして、この問題は多くの市民、さらには同じ問題を抱える人たちと共有されるべきだと考え、公開とさせていただきます。
   
                    記
1、私共は、公共図書館には、高度で専門的な情報を必要とする、図書館利用の熟達者だけでなく、いわゆる社会的弱者にも、等しく利用の場と情報の提供をする使命があると考えています。しかし、この度の指定管理者導入は、ホームページによると民間のノウハウを活かし、有料サービスの実施とあり、結果的に必要な情報を得られない市民が生まれる懸念があります。
公共図書館の社会的意義をどのようにお考えかお聞かせ下さい。
2、全事業に指定管理者制度を導入することは、市の中期計画に基づくものだそうです(10月15日、朝日新聞)が、施設、機関の果たす機能、役割においてはそぐわないものも当然あると思います。公共図書館もその一つだと思いますが、残念ながら中央図書館自らが指定管理者制度導入に積極的な様子が伺えます。
公共図書館が市民に対する責任を放棄し、民間に委ねるという結論に至ったことと、中央図書館長を始めとする幹部職員が司書専門職でないこととの関係について、お考えをお聞かせ下さい。
3、1館に指定管理者制度を導入することにより、現在構築されているネットワーク機能が崩れた時、再構築するには膨大な時間と予算と人員が必要なことは容易に予想されます。一度崩れた図書館はもう元に戻らない、と言われています。指定管理の導入に先行する他都市で参考にした点、それをどのように今回の計画に反映させたかをお教えください。また、参考にしなかった場合は、その理由をお教え下さい。
4、市民への説明責任について伺います。
①大正時代から営々として引き継がれ、築き上げられてきた公共図書館は、横浜市と横浜市民の財産です。その当事者である市民に説明会を開くことなく計画を進行している理由をお聞かせ下さい。
 ②10月14日の教育委員会で「運営充実のため市民参加を考えている」との話がありましたが、
  市民に十分な説明をせずに導入しても、市民と行政との信頼関係は揺るがないとお考えなのか、お聞かせ下さい。
 ③10月30日の常任委員会での答弁で「市民の代表である議員に知らせたから説明している」というのは、市民は行政ではなく、議員に説明を求めるように、と言われたと解釈してよろしいか。
また、ホームページに公開している資料は内容が不明確ですが、どこへ問い合わせれば十分な回答が得られるかのか、質問先をご提示ください。
  
5、学校図書館は一番地域と密着しており、かつ、子どもたちの成長、文化とのかかわりに不可欠のものです。学校図書館に専門の司書のいない横浜市では、学校図書館を支援する公共図書館の役割は重要です。しかし、前回の計画案には学校図書館支援がありましたが、この度の計画では学校支援に触れられていません。
①指定管理者の導入により、学校支援がどのようになるのか、学校支援についてのお考えをお聞か
せ下さい。
②常任委員会で「学校図書館への支援は現在できていないが指定管理者になったらできる」と答弁されましたが、現在できない理由と、指定管理者ならできるとお考えになる根拠をお示し下さい。
③また、学校図書館に司書(あるいはそれに準じる人)が入った場合には、公共図書館との連携によって、学校図書館の機能は更に広がります。既に、学校図書館に司書のいる自治体では、公共図書館との連携が構築されています。短期間で変わる可能性のある指定管理者によって、どのような効果を期待し、学校図書館とのどのような連携を考えているのか、お示し下さい。
6、経費削減についてお伺いします
 ①導入計画案では、1650万円の経費が削減されるとあります。これについては、教育委員会で人件費だと答弁されています。また、常任委員会では副市長が指定管理者に任せると答弁されましたが、それでは比較ができません。
現行と比較した試算の内容をお示し下さい。館長を始めとする職員の人数や資格、身分などどのように設定されたかもお示し下さい。
 ②サービスポイントの追加、開館時間の延長に伴い、人件費や配送手数料、開館に伴う諸経費がかかりますが、それでも1650万円削減できるとの説明のようです。これは、新たなサービスにかかる経費は有料サービスで賄うということでしょうか。
  新たなサービスにかかると想定される経費の内容と、それらを賄えると想定する有料サービスの内容を教えてください。①と矛盾しない回答をお願いします。
 ③人件費の削減では、いわゆる「ワーキングプア」を生じさせるだけで終るのではないでしょうか?
  年収に見合う仕事をしていないのならば、直営でも嘱託やアルバイトを採用することにより、コスト削減は可能ではないでしょうか?
7、計画段階で5ヶ月間の民間企業の研修を予定していることについてお聞きします
①サービス向上と経費削減のために指定管理者制度を導入するわけですから、現行のサービス水準の維持、向上の責任は請け負う業者にあります。従って、研修の予定は、期間、内容、講師など全て指定を受けようとする業者側の問題であり、図書館には利用者のために要求水準を満たすかそれ以上の業者を選ぶ責任はあっても、育てる責任はないと思います。市長のお考えをお聞かせ下さい。
②更に、要求水準も未定、公募も、選定もしていない段階で、長期間の引継ぎ・研修を予定に組み込んでいる理由もお教えください。これほどの研修期間を必要としない優秀な民間業者を探す意識がないと受け取れますが、いかがでしょうか。指定管理者制度に興味を示している企業とは既に話合いをしているのでしょうか?
これが市長のお考えになる「事業の硬直化」している現行の山内図書館を「柔軟な手法」で改善する民間のレベルなのでしょうか。お伺いいたします。
③民間図書館が育っていない日本では、図書館の経営ノウハウ、実行ノウハウは公共図書館にあると思います。横浜市の場合は全国的にみても優秀だといわれています。それを人件費が安いからといって指定管理者制度を導入し、サービス維持のために5ヶ月も研修するというのは、時間と、人(司書)の無駄ではありませんか。
その5ヶ月間、司書は本来の業務に専念できず、利用者の立場で言えば、その間、研修に携わっている司書さんからサービスを受けられなくなり、不利益ということになります。
これは、市民の税金を使い「民間業者を育てる」こと、市民へのサービス低下に繋がることから、指定管理者制度導入のデメリットだと思うのですが、いかがお考えでしょうか。
それ以上のメリットがあるとお考えなら、具体的にお教え下さい。
8、常任委員会の答弁をお聞きしても、将来の図書館の確固たる姿が見えてきません。指定管理者制度を導入した後、横浜の図書館はどのような図書館になっていることを想定されているのか、お聞かせ下さい。
中央図書館も将来的には指定管理者制度導入対象となるのでしょうか。それとも、中央図書館だけが直轄でその他地区館17館を指定管理にして傘下コントロールするというお考えなのでしょうか。
お聞きします。
9、10月15日の朝日新聞によると、「中央図書館が予算計画や蔵書方針を一元的に扱う」とありました。しかし、現場から離れたところでの選書や廃棄などの管理は地域の実態を反映しきれず、サービスの低下に繋がると懸念します。どのような対策をお考えかお聞かせ下さい。
同じ市立図書館といえどもそれぞれの館の蔵書構成の独自性や自律性が確保されているからこそ、ネットワークを組む価値がありますし、地域に密着しているからこそ利用価値があると考えます。
そのバランスを、中央図書館でどのように取る計画か、お聞かせ下さい。
10、指定管理者の評価について伺います。
 常任委員会の答弁では、全て山内図書館で「しっかり評価」してから決める、といわれていますが、新聞報道(10月15日朝日)では、効果があれば「5年を待たずに」他館にも「導入する」とあり、だとすると、この評価は大変重要なものです。
どのように評価するのか、その方法をお教えください。
①図書館の専門性を正確に評価するためには、外部評価委員にも専門家は必要と考えます。委員会の構成メンバーとその方の専門とするところをお教えください。
②比較考量する対象を同じネットワークに組み込んで協力体制をつくる、という矛盾したやり方で、どのように評価の公平性、明瞭性を確保しているのか、評価方法を教えてください。
 ③評価に当たり重要な仕様書や要求水準もこれから決めるようですが、そこに専門家である司書、サービスを受ける当事者である市民の参加はありますか。
④仕様書が守れなかったり、要求水準に達しなかった場合の業者の処遇と、市の責任の取り方をお教え下さい。
11、5年後に不適切であると判断された場合には、どのような方法で直営に復活することを想定しているのでしょうか。どんな方法をお考えなのか、その方法をお教え下さい。
また、そのときにかかる経費はどのくらいと想定されていますか。
それは、5年間の指定管理者制度導入により削減された額と比べ、損得はどのくらいになりますか。
導入しないで続けていた時と比べるとどうなりますか。お答え下さい。
以上、お手数をおかけいたしますが、書面にてご回答くださいますようお願いいたします。最大の政令指定都市、国際都市横浜の図書館の動向は全国の注目するところですので、ご回答は広く公開させていただきます。回答までの期間が短く恐縮ですが、すべて、既に計画立案段階でお考え済みの項目と存じますので、回答の期限を11月14日とさせていただきたく存じます。期日を延ばして回答いただける場合はその日にちをお答え下さい。
私共も、市長と同じく文化都市横浜を愛し、横浜の図書館が将来発展することを願っているものです。ご多忙は重々承知いたしておりますが、何卒、速やかにご回答くださいますようよろしくお願いいたします。
なお、ご回答をいただけなかった場合は、その旨、公表いたしますことを申し上げます。
                                      以上
(連絡先)溝井正美  E-mail:(省略)
      横浜市(以下略)
      携帯:(省略)   FAX:045-306-6300
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個人情報保護のため、団体住所および代表者連絡先は一部省略しています。
何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。
【この件についてのお問い合せ先】
横浜の図書館の発展を願う会
溝井正美(みぞいまさみ)
FAX:045-306-6300 メール:info@libraryfun.net