【陳情書】「横浜市立図書館条例の一部を改正する条例案」の審議及び意見書の提出について

陳情書

平成21年2月12日

横浜市会議長
吉原 訓 様

陳情者 団体住所  横浜市(個人情報保護のため省略)
団体名称  横浜の図書館の発展を願う会
代表者の氏名 溝井 正美

件名 「横浜市立図書館条例の一部を改正する条例案」の審議及び意見書の提出について
陳情項目
市第72号議案を市会で審議する際には、上程議案そのものだけでなく、図書館と指定管理者制度に関する法律(図書館法及び地方自治法)及び総務省通知等に違反していないか、慎重に審議していただきたい。そして総務省に対して、通知違反があれば、自治体を指導するよう意見書を出していただきたい。具体的には、以下の6項目を例示する。
1.指定管理者の「業務の範囲」(改正第4条第1項(1))の追加規定に合わせ、教育委員会の「業務の範囲」を規定するため、図書館法第3条を引用する条文を追加すること。
2.改正第4条第1項(1)の「法第3条各号(同条第5号を除く。)」は「法第3条各事項(同条第5事項を除く。)」に修正すること。
3.地方自治法第244条の2第4項が条例に規定することを要求している「指定管理者が行う管理の基準」を「横浜市立図書館条例」に規定すること。
4.改正第4条第4項の「図書館の設置の目的」が何を指すのかの条文が「横浜市立図書館条例」には規定されていないので追加すること。
5.中央図書館は指定管理者の指導・支援をするので、中央図書館は指定管理者制度を導入しないことを明記すること。
6.第2条、第5条の文言の修正(「各号の一」を「いずれか」、「または」を「又は」、「もしくは」を「若しくは」に改める。)は、同様の文言がある現行条例第3条第4項、改正条例第6条第1項、同第3項も、今回の改正と同時に改正すること。
                                      
陳情の理由・経緯等
 市第72号議案は、横浜市立図書館に指定管理者制度を導入するために、現行の横浜市立図書館条例を改正する案であるが、改正後の横浜市立図書館条例は、図書館法(第3条)、地方自治法(第244条の2)及び総務省の通知(総行行第87号)に照らし、条例で決めるべき項目が「横浜市立図書館規則」に規定されているために、法令違反のコンプライアンス問題が発生する恐れがある。それを避けるために、市会において市第72号議案の慎重審議と修正を要望するものである。合わせて条例・規則体系の整備を行い、市民に分かりやすい条例に改正するように教育委員会に指摘をしていただきたい。平成20年第4回定例会では、この論点は審議されていないので、今回の市会では、この論点も含め慎重な審議をお願いし、市民にその結果を開示していただきたい。
以下、請願の理由の詳細を述べる。
1.「業務の範囲」
 市第72号議案の新第4条第1項(1)は、地方自治法第244条の2第4項の「業務の範囲」の規定である。「法第3条各号(同条第5号を除く。)に規定する事項に関すること。」と規定している。しかし第5号は、「分館、閲覧所、配本所等を設置し、及び自動車文庫、貸出文庫の巡回を行うこと。」と規定しているので、例えば分館の設置は、指定管理者の業務の範囲ではなく、教育委員会(中央図書館)の業務の範囲であるから外したのであれば、教育委員会(中央図書館)の業務範囲であることを、条例上規定すべきである。
ところが横浜市立図書館条例には、図書館業務を規定した条文がない。同条第6条(改正案第8条)で委任された横浜市立図書館規則(教育長が規定し市会のチェックがかからない。)には、その第2条に、図書館法第3条の9項目中、1.2.3.4.6.が規定されているが、5.は規定されていない。本来、「条例」に規定すべき図書館の「業務の内容」が、議会のチェックが及ばない「規則」に規定され、しかも図書館法第3条の9項目全部ではなく、限定して規定されている。指定管理者制度を導入するための今回の条例改正において、指定管理者の業務内容だけを規定していることは、法形式上も地方自治法第244条の2第4項及び「地方自治法の一部を改正する法律の公布について(通知)」(総務省自治行政局長 平成15年7月17日、総行行第87号)の「条例で規定すべき事項」に違反する可能性が高い。この機会に、図書館条例と図書館規則とを「業務の範囲」の観点から、基本から整備する必要があると考える。
2.「号」の表記を「事項」に
 新第4条第1項(1)に「法第3条各号(同条第5号を除く。)」とあるのは、「号」ではなく「5番目の事項」ではないか。図書館法第3条は、平成20年6月11日に、「各号」は「次に掲げる事項」という文言に改正、施行された。今回の改正案は、旧法の文言をそのまま引用している。「号」と記述する根拠を教えていただきたい。
3.「指定管理者が行う管理の基準」
 地方自治法第244条の2第4項には、「指定管理者の指定の手続」の他に「指定管理者が行う管理の基準」及び「業務の範囲」その他必要な事項を定めるとある。「指定管理者の指定の手続」及び「業務の範囲」は規定にあるが、「指定管理者が行う管理の基準」の規定が見当たらない。これは教育長が策定する「横浜市立図書館規則」、「業務要求水準書」又は「仕様書」で決めればよいものではなく、「条例」で定めないと法律違反になるおそれがある。「指定管理者が行う管理の基準」の具体的な内容は、総務省の通知に明示されている。例えば、休館日、開館時間等を「横浜市立図書館規則」に規定することを委任するなら、「指定管理者制度が行う管理の基準」のどの項目を同規則に委任するのかを、条例に明示すべきである。(神戸市の事例参照)
4.「図書館の設置の目的」
 新第4条第2項、同条第3項、同条第4項及び新第5条は、地方自治法第244条の2第4項の「指定管理者の指定の手続」にあたる規定である。横浜市には、札幌市のような指定管理者制度の手続の一般条例がないので、指定管理の手続は個別条例で規定するしかない。横浜市の他の「公の施設」に指定管理者制度を導入する場合の条例をチェックしたが、今回もほぼ通常の規定になっている。問題は、同条第4項の「図書館の設置の目的」の内容が横浜市の図書館条例にないことである。横浜市の他の「公の施設」の条例では、設置の目的が読み取れる。他の都市の図書館条例には図書館法第1条の表現と同様に「市民の教育と文化の発展に寄与することを目的とする。」などと明示している。第4条で「図書館の設置の目的」という文言を入れているのは、教育委員会が指定管理者を選定する重要な判断基準であることを示している。判断基準の内容に疑義が生じないように、「図書館の設置の目的」を条例の中に明示すべきである。横浜市立図書館の設置目的は何か知りたい。
5.中央図書館は指定管理者制度適用外であることの明示
 条例第1条では、中央図書館は単に一番目に書いているだけであり、他の17の地域図書館とは、条例上は同一の扱いである。横浜市立図書館規則の第8章に中央図書館の規定があり、第38条に中央図書館長と、地域図書館長の職務の規定がある。中央図書館長は「教育長の命を受け、図書館の事務を掌理し、所属職員を指揮監督する」また「中央図書館以外の図書館の館長は、中央図書館長の命を受け」とある。しかし、中央図書館長は、直営ではない指定管理者(例えば民間会社)の事務は掌理できず、指定管理者の社員を指揮監督できない筈である。指定管理者制度の導入を「条例」で決めるときに、「規則」ではなく「条例」に中央図書館の位置づけを明示すべきである。また昨年の第4回市会での審議において教育長は、中央図書館が直営を堅持することを前提に、指定管理者制度のデメリット(弊害)の対応策として、中央図書館が山内図書館(指定管理者制度導入館)を指導・支援する、と説明しているのだから、条例上に中央図書館には指定管理者制度を導入しないことも規定すべきである。
6.文言の修正
 第2条の「各号の一」を「いずれか」に改めるとしているが、これは「号」といういい方をやめる「用語のルール」の変更によるものと思われる。「各号の一」の文言が、第4条(改正後の第6条)第3項にもあるが、こちらも同時に改正していただきたい。
また、第5条中「または」を「又は」、「もしくは」を「若しくは」に改めることも、「用語のルール」の変更によるものと思われる。「または」の文言が、第3条の第4項、第4条(改正後第6条)第1項及び同条第3項(3箇所)にあるが、こちらも同時に改正していただきたい。条文番号を変更しただけなので改正しないとの見解かもしれないが、「横浜市立図書館条例」の大きな改正なので、市民が改正後の条例を読むときに混乱なく読めるような配慮をお願いしたい。

以上

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★陳情書原文(PDF)
以下は、法令関係の参考URLです。
上記陳情書に関わるものを掲載しました。ご活用下さい。
●横浜市
http://www.city.yokohama.jp/me/sikai/pdf/gian/h20_4t_sig072.pdf
http://www.city.yokohama.jp/me/reiki/honbun/ag20211691.html
http://www.city.yokohama.jp/me/reiki/honbun/ag20211701.html
●図書館法
http://www.houko.com/00/01/S25/118.HTM
●旧図書館法
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/dokusyo/hourei/cont_001/005.htm
●地方自治法(第10章)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO067.html
●総務省通知
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/170608ab.pdf